基礎控除を上回る財産がある場合に、いったいいくらの税金を支払わなければいけないのでしょうか。
これは、非常に関心の高いところかと思います。
相続税の計算は、なかなかややこしいものです。ここでは実例をあげポイントだけを押さえたいと思います。
財産が同じでも、相続人の数や構成によって税額は変わる!
相続税は、
『基礎控除を超えた金額に一定の税率をかけて計算する』 のではありません!
ではどうするのかと言うと、
- 基礎控除を超えた金額を法定相続分に分割し、それぞれの金額に応じて算出し、
- その合計金額を納税額の総額とし
- 実際の相続額の割合に応じ、各相続人に納税義務を課す
と言うものになっています。
言葉だけですと、理解しづらいので実例で説明します。
相続税の計算のしかた 実例
相続税の速算表 平成27年以降 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 50% | 4,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税の速算表 平成26年以前 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
3億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円超 | 50% | 4,700万円 |
例 1
基礎控除を超える金額 : 8000万円
法定相続人 : 配偶者、嫡出子2名
遺産分割協議により、配偶者2000万円、嫡出子それぞれ3000万円を相続
(割合にすると、配偶者0.25 、 嫡出子それぞれ0.375)
計算 1
法定相続分に分割したと考えると、配偶者4000万円、嫡出子それぞれ2000万円
配偶者 4000×0.2-200=600
嫡出子 2000×0.15-50=250
嫡出子 2000×0.15-50=250
合計 600+250+250=1100万円が納税の総額
この納税額を現実の相続分の割合で各自が負担する。計算すると、
配偶者 1100×0.25=275万円
嫡出子 1100×0.375=412.5万円
嫡出子 1100×0.375=412.5万円
が各自の納税額となります。
なおこのケースでは配偶者控除を適用できますので、配偶者の支払う相続税は0です。
嫡出子2名がそれぞれ412.5万円を納税することになります。
もし、法定相続人が子供1名だけの場合は
8000×0.3-700=1700万円になるので、例1に比べ600万円多くなることがお分かりいただけると思います。
例 2
基礎控除を超える金額 : 2億円
法定相続人 : 配偶者、嫡出子1名、非嫡出子1名
遺産分割協議により、配偶者1億2000万円、嫡出子、非嫡出子それぞれ4000万円を相続
(割合にすると、配偶者0.6 、 嫡出子0.2、非嫡出子0.2)
計算 2
法定相続分に分割したと考えると、配偶者1億円、嫡出子6666万円、非嫡出子3333万円
配偶者 10000×0.3-700=2300
嫡出子 6666×0.3-700=1400
非嫡出子 3333×0.2-200=467
合計 2300+1400+467=4167万円が納税の総額
この納税額を現実の相続分の割合で各自が負担する。計算すると、
配偶者 4167×0.6=2500万円
嫡出子 4167×0.2=833万円
非嫡出子 4167×0.2=833万円
が各自の納税額となります。
なおこのケースでは配偶者控除を適用できますので、配偶者の支払う相続税は0です。
嫡出子、非嫡出子がそれぞれ833万円を納税することになります。
もし、法定相続人が子供1名だけの場合は
20000×0.4-1700=6300万円になるので、例2にくらべ約2133万円多くなることがお分かりいただけると思います。
相続税 補足
遺贈、死因贈与契約がある場合
遺贈とは、遺言により財産を贈与する事を言います。法定相続人に対する遺贈は相続とみなされる事が多いため、少々正確さには欠けますが、『法定相続人以外への遺言による贈与』と考えてあながち間違いではないでしょう。
一方、死因贈与契約とは『死亡を条件として財産を贈与する契約』です。遺贈が遺言者の一方的な意思により成立するのに対し、死因贈与契約は名前の通り契約ですので、贈与する側、受け取る側、双方の合意により成立します。
なお、遺贈により贈与を受けるものを受遺者と呼びます。
遺贈、死因贈与契約は『相続ではなく、贈与』なのですが、税法上は『相続税』が適用されます。
贈与税は相続税に比べ、かなり大きな負担となりますが、遺贈、死因贈与契約の場合は相続税と同じ税額で贈与ができる事になります。
注意! 相続税の2割加算
速算表をもとに計算した金額がそのまま適用できるのは、法定相続人が
- 配偶者
- 直系血族
である場合だけです。その他の場合、計算した金額に2割加算した額を納税する必要があります。
第3順位つまり兄弟姉妹が法定相続人である場合や、法定相続人以外への遺贈、死因贈与契約がある場合、この2割加算をしなければいけませんので注意が必要です。
また、いわゆる孫養子は直系血族ですがこの2割加算の対象になります。
作成された遺産分割協議書を添削します
遺言とは違い厳格な様式などはありませんが、慎重に作成すべき書類と言えます。
作成された遺産分割協議書に間違いが無いかチェックし、各種手続きがスムーズにいくよう添削します。